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レポート

薬局団体連絡協議会 第2回シンポジウムを開催​

コロナ禍を教訓として患者・生活者から信頼される薬局像を議論

2020.10.18 オンライン開催

薬局団体連絡協議会は、2020年10月18日に「第2回 国民のための薬局のあり方シンポジウム」を開催しました。新型コロナウイルスの感染防止を鑑み、今回はZoomウェビナーを利用したオンラインでの視聴スタイルとし、演者は万全の感染対策のもと、都内スタジオでディスカッションを行いました。
昨年、初めて開かれたこのシンポジウムは、「薬局が薬物療法と地域のヘルスケアを担うインフラとして貢献する」との理念を共有し、その実現に向けて薬局団体が結集し開いたものです。
今年は昨年からのメンバーである次世代薬局研究会2025、日本コミュニティファーマシー協会、保険薬局経営者連合会の3団体に加え、新規に地域医療薬学研究会が加入。さらには賛同団体として薬局支援協会が参画し、連携の輪を広げての開催となりました。
今年のシンポジウムのテーマは、「Postコロナにおける薬局のあり方」です。コロナ禍を教訓として、真に患者、地域生活者から信頼される薬局を探る議論を深めました。

 


■大会長より開会挨拶


日本コミュニティファーマシー協会 代表理事 吉岡ゆうこ

「明日の行動につながる議論を」

会の冒頭に、大会長を務めました日本コミュニティファーマシー協会代表の吉岡ゆうこより挨拶をいたしました。

「当初はフェイストゥーフェイスでの開催を予定しておりましたが、コロナ禍によりオンラインでの開催となりました。私たちもニューノーマルに対応していかなければなりません。オンラインではありますが、こうしてみなさまとつながっていることを感じられればと思っております。
昨年は共同宣言を行い、今年はその行動を発表させていただく予定でおりましたが、コロナ禍により、今やらなくてはいけないことに集中しようという考えから、Postコロナにおける薬局のあり方をテーマとした開催とさせていただきました。感染対策、デジタル化等々、対応しなければいけないことがたくさんあります。本日のシンポジウムがみなさんの明日の薬局の行動につながれば幸いです」


■加盟4団体からの提言

①次世代薬局研究会2025 代表 藤田道男
「薬局のブランディングを考える時代に」

藤田からはコロナ禍によって薬局で起きたことを総括するとともに、薬局が取り組むべき課題について提言を行いました。
「コロナ禍によって、受診抑制による患者数減少、長期処方の増加、オンライン服薬指導の増加などが起こりました。次世代薬局研究会2025でも会員に調査を行ったところ、約9割が来客者が減少したと回答しました。また、お薬相談会の中止や感染が疑われる患者の隔離などの対応に追われたという結果がありました。
コロナ禍で露呈した薬局の課題として、保険調剤依存型経営の限界が挙げられます。門前の利便性が解消する中、住まいの近くの薬局への回帰をかかりつけ化の契機にできるのか、健康相談機能の向上などが求められると思います。
Postコロナ時代では、今後、薬局がブランディングや利益が出る仕組みを考えるマーケティングなどを考えていく必要があると思っています」


②日本コミュニティファーマシー協会 理事 篠原久仁子
「世界の薬剤師とコロナ禍の情報交換」

篠原からは、薬局現場での取り組みを通して、薬局で起きている変化とあるべき姿について提言を行いました。
「当協会ではコロナ禍の中、会員への緊急アンケートによる現状の把握や、WEBによるフォーラム開催などを行ってきました。フォーラムでは海外の薬剤師に参画してもらい、世界の薬剤師がどのようにコロナに立ち向かっているのか、情報交換しました。
『健康サポート機能に関する管理薬剤師の意識調査』や『薬局のかかりつけ機能と健康サポート機能に関する患者の意識調査』なども行ってきました。1930人を対象にした患者意識調査では、健康サポート薬局を利用している患者さんの方が、薬局主催の勉強会への参加意向が高いなど、患者の意識への有用性が明らかとなっています。
『薬局のことをもっと国民に知らせるべきだ』との指摘を受け、ハンドブックも作成しました。
箱出し調剤の提言を含め、今後も薬局に関する提言を行っていきます」
  
③保険薬局経営者連合会 代表 山村真一
「国民の期待に応えられる準備はできているのか」

山村からは、昨今の薬局を取り巻く環境変化と世の中に求められる薬局の姿について提言を行いました。
「コロナだけではなく、緊急避妊薬においては、市民が薬局に期待を寄せてくれています。しかし、このようなムーブメントに薬局はキャッチアップできているのでしょうか。
国民の期待に、しっかり応えられる薬局の姿が求められていると思います。オンライン資格確認の導入で患者の薬剤情報などが閲覧できるようになった時、処方元でも併用薬は確認できるようになるのであり、薬局だけができる価値の提供が必要になると思います。当連合会では薬局の持つ情報で有害事業の発見を深掘りしていく事業などにも取り組んでいます。裁量拡大、DX、新しい顧客の創出にも薬局は取り組んでいくべきでしょう。
もう一つは調剤報酬体系の見直しを求めており、体系を見直すことで薬局に変化が起こるのではないかと考えています。
Postコロナは薬局の本領発揮の時代であり、10年後、20年後を見据えた日本薬局大改革計画が求められているのではないでしょうか」


④地域医療薬学研究会 代表 鈴木順子
薬局から手渡すコロナ対策冊子を制作

鈴木からは、保険医療の制度的な限界を指摘した上で、薬局に求められている療養への支援強化の必要性を指摘しました。
「基本的な課題として人口構造の変化に伴う疾病構造の変化があり、治す治療だけでなく、支える療養への支援力が問われています。そこに薬局としてどうコミットしていくのか、考えていく必要があります。
コロナ禍で薬局に足りなかったことは薬事衛生担保力であり、それは皮肉にも目指そうとしていた薬局の力だったように思います。
当研究会では一つの取り組みとして、『コロナ時代を生きる知恵 予防・対策・暮らしのハンドブック』を制作しました。薬局から患者さんに手渡していただくものです。こういった冊子が薬局と地域住民の間に確かな信頼構築をつくるための一助になったという声もいただいています。
一人一人の薬剤師がどんなに意識が高くても、薬局という場で活かすことができなければ公衆衛生の向上、国民の健康な生活確保という任務を果たすことはできません。今後も本連絡協議会での議論を持ち帰り、深化、実行化していきたいと考えています」

 


■賛同団体からの提言

薬局支援協会 代表 竹中孝行氏

「かかりつけへの意識が広がっている」

竹中氏からは、最近の薬局の環境変化と、期待を話していただきました。
「テレビドラマのアンサングシンデレラの影響もあるのかもしれませんが、最近、患者さんから『かかりつけを持った方がいいらしいね』と声をかけていただくことが増えました。かかりつけ薬局という言葉が浸透してきているのではないかと思っています。電話やSNSを使って、健康について聞かれることも多くなったと感じています。
当協会では薬局・薬剤師の素晴らしい取り組みを一般の方に知っていただくための『薬局アワード』というイベントを開催しています。薬局はどこも同じではないのという言葉を聞いたことがきっかけです。薬剤師になりたいというお子さんたちの声を直接聞く機会もあった中で、この現状を変えなければ、将来、薬剤師を目指した子供たちが苦労をしてしまうのではないかと危機感を持ったからです。
コロナ下で薬局は進化が必要になっています。本連絡協議会の議論が、薬局の刺激になっていくことを期待しています」

 


■基調講演①

「コロナが与えた教訓」~流通の課題と薬局~ 
株式会社ドラビズon-line 編集長 菅原幸子氏

基調講演①として、ドラビズon-lineの菅原氏より、「コロナが与えた教訓」と題して講演をいただきました。
「コロナだけではなく、次なる感染症に備える意味も含めて、今後のマスクや消毒薬などの感染対策品を、どのように薬局から供給するのか、議論しておく必要があるのではないかと思っています。
例えば台湾のようにデジタルを活用して地域ごとのマスクの在庫や供給を把握し、国民健康保険証をつかって過不足のない供給をすることも、日本でも検討することができるのではないでしょうか。
モノの供給は、医療の中でも薬局が提議すべきテーマではないかと思っています。また、モノの供給を通して、薬局から地域住民の方に正しい情報を伝えることにもつながるのではないでしょうか」

 


■基調講演② 

「コロナ禍であらためて考える薬局の役割」
~令和2年度調剤報酬改定を踏まえて~
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 執行役員 田宮憲一氏

 

前・厚労省保険局医療課薬剤管理官でもある田宮氏からは、調剤報酬改定の振り返りやコロナ下の薬局の現状を解説いただくとともに、薬局・薬剤師への期待をお話しいただきました。
「私見ではありますが、コロナ禍で、オンラインによる服薬指導が加速する中、セルフメディケーションを含め、気軽に相談できるかかりつけ薬剤師・薬局でなければ意味がないのではないでしょうか。
オンライン化が進むと、これまで以上に患者さんは正しい調剤は当たり前と認識するのではないかと思います。処方日数も長期化する中で、分割調剤の提案も含めて患者へのフォローーアップを進めることが重要だと思います。
健康サポート薬局も道半ばです。自薬局をかかりつけと認識してもらえるよう、ポリファーマシーや重複投薬解消、残薬への対応、在宅業務のほか、健康サポート機能を併せ持った薬局が今後の生き残りへの道になるのではないでしょうか」

 


■シンポジウム


前半に登壇したメンバーを交えて、『Post コロナにおける薬局のあり方とは』と題したシンポジウムを開催しました。
モデレーターを吉岡ゆうこが務めました。
シンポジウムでは、オンラインで参加している視聴者から、活発な質問をいただき、現場の課題に即した議論が活発に展開されました。

次回、第3回シンポジウムは2021年9月に開催を予定しています。

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